「わ、私はレヴという者だが…
…驚いたな。この町に人がいたとは…」

先程の声の主は私より幾分若い黒髪の青年だった。



「俺も驚いたよ。
あんた同様、俺もこの町には人がいないもんだと思ってたからな。」

「君もこの町の者ではないのか?」

「あぁ、森を歩いてたらいつの間にかこの町に来てて…
町には人っ子一人いやしないし、その上、いくら歩いてもどこが出口なんだかわからない。
同じような街並みが続くばかりで出られないんだ。
薄気味悪いったらないな。
この町は一体どうなってるんだ?
あんた、何か知ってることはないのか?」

男は多少興奮しているのか、早口で一気にそうまくし立てた。



「いや、私も君と同じようなものなのだ。
ただ、1つ…確証はないが思い当たることはある。」

「思い当たる事?どんなことなんだい?」

私はさほど広くはない教会の中を見回した。
しかし、私が、探しているものはそこには見当たらなかった。



「もしや、どこかに止まった時計があるのではないかと思うのだ。」

「止まった時計?
壊れてる時計ってことか?」

「いや、壊れているわけではないのだが…
ここへ導かれたということは、ここにその時計があるのではないかと思ったのだ…」

「なんだかよくわからない話だな。
あ、そうだ。俺はセルジュっていうんだ、よろしくな。」

「そうか、よろしく、セルジュ。」

私は彼と握手を交わした。



「ところで、レヴ、これからどうする?」

「そうだな…」

ふと、目を泳がせた時に、私は祭壇の横に小さな扉があるのを見つけた。



「ちょっと待ってくれ。」

私はその扉を開け、部屋に入った途端に探していたものを発見した。
あの屋敷にあったものと同じような時を刻まない古い時計を…



「あ、もしかしたらさっき言ってたのはあの時計のことなのか?!」

私の後をついて来たセルジュが、目ざとく時計をみつけた。



「なぁ、レヴ!
これをどうするんだ?
これで何がどうなるんだよ?」

「ちょっと待て…」

私は、古時計のねじを巻き、懐中時計の文字盤を見ながらそれと同じ時刻に合わせた。