石畳の道は途切れることなく続いている。

曲がりくねり入り組んだ道を歩いているうちに、私は自分の居場所を見失っていることに気が付いた。



(…こんなことなら、早くに引き返せば良かった…)



しかし、今更、そんなことを考えても無駄なこと…

とにかく、どうにかしてこの町を出るしかない…

そう思った時、私はどこかで小さな音がしたように感じた。

実際の音なのか、ただの気のせいなのかわからない程微かな…鈴のような軽い音が…

立ち止まりじっと耳を澄ませてみるが、あたりはシンと静まり返り物音1つしない…



(気のせいだったか……)

そう思い、歩を進めた時、またあの音が聴こえてきたのだ。



間違いない!
確かに鈴の音がする…

私は、その音に導かれるように歩き出した。



歩いていくうちに鈴の音はだんだんと大きく、はっきりと聴こえるようになっていた。



(…そうだ…あの時と同じだ…)

私は、森の中のあの屋敷のことを思い出していた。

屋敷の中では私の進むべき方向をランプの明かりによって示された。
今回はそれが鈴の音に変わっただけなのだ。

そう考えるとあまり良い気はしなかったが、ここでそれに抗っても仕方がない。

どうせまた今度も導かれる先に行かなくては、ここから出られないことになっているのだろうから…



私は半ば諦めに似た気持ちを胸に抱きながら、鈴の音の源を探して歩いた。



しばらく歩いた時に、私はふとある事に気が付いた。

鈴の音と私の靴音以外にもう一つの音があることに…
それは、もう一つの靴音だった。



この先だ…
この先の曲がり角から、鈴の音と靴音が聞こえてくる。

私は逸る気持ちを押さえきれずに、急ぎ足で音の方へ進んで行った。



曲がり角を曲がると、そこには小さな教会があった。
鈴の音も靴音も、今は聞こえない…




(ここか……)

私は、教会の重い扉に手をかけた。
少し軋んだ音と共に扉が開く…



「誰だ……!!」