「レヴ様、おでかけですか?」

「あぁ…」

執事らしき格好をした見知らぬ男性の問掛けに、私はぶっきらぼうにそう答え、屋敷の外へ出た。

大きな門は、錆が落とされ、その上に白いペンキが綺麗に塗られていた。



(一体、いつの間に…?)



外へ出ると森の様子がなんとなく違うことに気が付いた。
私はこの屋敷に来た時とは逆方向へ歩き出していたのだが、この森はこんなにも歩きやすい森だっただろうか?
太陽の光がやけに眩しい…
逆方向だというだけでこんなにも印象が違う事に、私はいささかの戸惑いを感じていた。



しばらく歩き、森を抜けると、そこは石畳の続く町だった。
まるで、違う時代に戻ったかのようなどこか心の落ち着く懐かしさと温もりを感じる街並みが続いている。

しかし、なにかがおかしい…

その原因に私はすぐに思い当たった。
そうだ、この町には音がないのだ…!
私の靴音だけしかこの町には存在しないかのように、この町は静まり返っているのだ。

それだけではない。
ここまで歩いて来ても、誰一人として出会う者がいないのだ…



(もしかしたら、ここは疫病かなにかによって捨て去られた町なのか…?!)



そんなことを考えると、今までの印象はがらりと変わり、どこか薄気味悪い町に見えてきてしまう。
出来るだけ早くにこの町を出た方がいいのかも知れない…



どこへ続くともわからない石畳の道を私は急ぎ足で歩き続けた。