「あ、そうだ!」

少し歩きかけた所でセルジュは、老婆の元へ走り出したかと思うと、少し話をしてまたすぐに戻って来た。



「何か忘れものか?」

「あぁ、ルシアからは魔法の代償に何をもらったかって聞いてみたんだ。」

「あぁ、そのことか。それで?」

「寿命を50年ほど…だってさ。
あの婆さん、よく言ってくれるぜ。
そんなことをしてたら、あの婆さんは永久に死ねないな。」

私達は、老婆の冗談に笑った。
それが、冗談ではないということには少しも気付かずに…



昼過ぎになって、私達は女神像の町に着いた。



「セルジュ、今日はけっこう空いてるぞ。
女神像に祈って行こう!」

「あんたは本当にそういうのが好きなんだな。」

広場の隅にある女神像の祠の前には人々が集まり祈りを捧げていたが、この前に比べるとそれは少ない人数だった。



「これが、女神様か…」

「誰かに似てるな。」

「おじちゃん、この女神様はルシア様って言うんだよ!」

「おじちゃんはひどいな!
レヴはともかく俺はまだお兄ちゃんだろ?
…え?今、なんて言った?」

「え?」

「女神様の名前だよ!」

「え…女神様なら…ルシア様だよ!」

小さな女の子にそう言われ、私達は今一度女神像の顔を見た。



「レヴ!」

セルジュの言いたいことは言葉にせずともわかった。
この女神像は、ルシアの顔にそっくりなのだ。
顔が似てるだけならともかく、この女神の名前がルシアだとは…一体、どういうことなのか…?!



「レヴ…これはただの偶然なのか?」

木陰で寝転びながら、セルジュが呟いた。



「さぁな…私にもまるでわけがわからん…
ただ…偶然ではないような…そんな気はする…」

「そうだよな!
こんな偶然があるわけはないよな!」

セルジュが状態を起こし、熱のこもった口調でそう言った。



しかし、それにどういう意味があるのかは、何一つわからない…



「また、振り出しに戻った感じだな。」

「振り出しか…」



それならそれで良い。
また1つずつ駒を進めて行くだけだ。



私達は、近くの店で遅い昼食を採り…そして、暗くなる前に森に向かうことにした。