「一体、何がどうなってるんだ?!」

「……私にもよくはわからないが…
まぁ、良いじゃないか。
そもそもこんな世界に来ていること自体が、不思議なことなんだ。
不思議な世界で何が起こっても、それは不思議でもなんでもないのだよ、きっと。」

「……あんたの言う通りだな。
死んだ町に、魔女に生きてる人形…
おかしなことばかりだ。
1日や2日の時間のズレがあっても、今更、驚く事もないってわけだな。」

セルジュは、そう言って大きな声で笑い出した。
私もつられて笑い出す。



「なんだい、年寄りにだけ働かせて、あんたらは何を楽しそうにしとるんじゃ。」

ブツブツと文句を言いながら、老婆がスープのようなものを運んで来た。



「あぁ…申しわけありません。
何かお手伝いすることがあれば…」

「もう済んだよ。
そういうことはもう少し早くに言ってほしいもんだね。
さぁ、食べな。」

セルジュは、スープをスプーンでかきまぜながら、なにが入ってるのか確かめているようだ。



「中身はとかげとコウモリと龍の目玉さ!」

「ええっっ!!」

椅子から飛びあがりそうになったセルジュを見て、老婆はおかしそうに笑った。



「まったく肝っ玉の小さい男だね。
そんなものが入ってるわけないだろう。
食べたくなけりゃ、食べなくても良いんだよ!」

老婆は、一人でそのスープをすすり始めた。
せっかくの好意を無にするわけもいかない。
私もそれに倣ってスープに口をつけた。



「お、おいっ!レヴ!
大丈夫なのか?!」

スープはごく普通の野菜のポタージュのように思えた。



「私がカエルにでも変わったら、そのへんの池に放ってくれ。」

老婆は私の冗談に笑ったが、セルジュはさらに顔をひきつらせただけだった。




何事もないままに食事は終わり、私達はその部屋の長椅子で休ませてもらうことになった。
セルジュは、私と老婆が食べ終えてしばらくしてから、やっと安心したのか冷たくなったスープをすすっていた。







「本当にお世話になりました。」

次の朝、私達は老婆の家を発った。
泊めてもらった見返りを後で請求されたら怖いとセルジュがいうので、金を渡した所、老婆は意外にも喜んでくれた。



「困ったことがあったら、またおいで!」

老婆は上機嫌で私達に手を振ってくれた。