食堂へ続く扉は案の定、固く閉ざされている。

つまり、それはここで何かをしなくてはならないということなのだ。
何かをしなくてはきっと先には進めないルールになっているのだろう。

私は頭の中をまとめようと長椅子に腰かけた。

もう一度、部屋の中をゆっくりと見回す…

その時、ふと私の視線が置き時計に止まった。

ねじが切れているのか、時計は時を刻むのを忘れたようにじっと止まっていた。

私は立ち上がり、時計のねじを巻く。

時計はそれを喜んでいるかのように、チクタクと時を刻み始めた。

だが、あたりには何の変化もない。
時計は無関係だったようだ。

時計は3時11分をさしていた。
私は懐中時計を取りだし、それを見ながら時計の針を正しい時刻に合わせた。



その瞬間、私は眩暈のような感覚に襲われた。
私の周りの世界だけがゆっくりと回転しているような…どこか深い穴の中に落ち込んでいくような…そんな不快な感覚だった…



(もしかしたら、先程の料理に毒が仕込まれていたのか…?)



しかし、そのおかしな症状はすぐにおさまった。



(考えすぎだったか…)

私は再び長椅子に腰をかけた。

昨夜はゆっくり休んだはずだったが、疲れていたのだろうか?

そんなことをぼんやりと考えていると、にわかに屋敷の中に人の気配がするのを感じた。



(誰かいるのか…?)

食堂に続く扉は、今度はすんなりと開き、そこには食器の片付けをする数名のメイドの姿があった。



「おはようございます。レヴ様。」

まるで見覚えのないメイドが私に挨拶をする。



「レヴ様、何か?」

「君達はだれだ?
なぜ、私の名を知っている?
いつからここにいた?」

「まぁっ!レヴ様ったら、ご冗談を…」

若いメイド達は私の問いかけには何も答えずに、ただくすくすと笑っている。



(一体、どういうことなのだ?)

食堂を通りぬけ、廊下に出る。



「レヴ様、おはようございます。」

「おはようございます、レヴ様!」

私に頭を下げるのは見知らぬ者達…

どうなっている…?
先程までこの屋敷には誰一人としていなかったのに…
混乱した頭を抱え、私はそのまま玄関に向かった。