「けっこう困った状況なんだな。
今、この世界が元に戻りつつあることをその狂人は知ってるのか?」

「それは…おそらく…」

「じゃあ、またそいつがなにかしでかすんじゃないのか?」

「そうかもしれないし、そうではないかもしれない…」

「なんだ、それ?」

「私にもわからないんだ。
あんな大きな力を使ったんだ…
奴は力を使い果たし、あのまま死んでしまったのかもしれないと考えたこともあった。
だが、その反面、あいつのことだから、まだしっかりと生きていて、また悪事を企んでいるのかもしれないとも考えることもある。
要するにわからなんだ。
でも、今まで何もしなかったことを考えると、やはり、奴は死んでしまったのかもしれないな。」

「それなら良いけど…
…いや!良くない!
そしたら、あんたはどうなっちまうんだ?!
あんたは、一生、人形のままだってことになるんじゃないのか?!」

「………それは仕方のないことだ…
たとえ、奴が生きていたとしても、奴が素直に私を元に戻すとは考えられない。
私が人形であることは…きっとどうしようもないことなんだ。」

「そんな!!
あんた、そんなことがよく言えるな!
本当にそれで良いのかよ!」

「私も、最初からこんな風に考えていたわけじゃないさ。
しかし、君には想像もつかない程の長い年月が私の気持ちをこんな風に変えたんだ。
受け入れらなければ仕方がないことなんだ。
私は人形…自ら命を断つことさえ出来ない…
いや、そもそも私は生きていると言えるのかどうかもよくわからないが…」

「レヴ…」

セルジュが私に救いを求めるような視線を投げかけた。
それは、私とて同じ気持ちだった。
これほどまでに気の毒な境遇の彼に、私はかける言葉がみつからなかった…



「さぁ、早く行きたまえ。
勝手なことを言うようだが、あと少しだけ、頑張ってほしい。
あと少しでこの世界は甦り、そして、君達は元の世界へ戻れるんだ。」

「…俺達、道がわからないんだ…」

「当然だよ。
ここはちょっと違った場所だからね。」

「違った場所?」

「そう…まぁ、そんなことはどうでも良い。
とにかく、霧が濃くなったら適当に歩いてみてくれ。
そして、魔法使いの婆さんの家の前の道をさらに先に進むんだ。」