「はいよ!お待ち遠様!」



店の主人が、私達の注文したものを持ってにこやかに現れた。



「さぁ、冷めないうちにささっと食べとくれ!」

まさか、旅人が珍しいわけでもないだろうが、話好きなのか、店の主人は私達の方を見ながらにこにこと微笑んでいる。



「ここには、遠くから来る人も多いのかい?」

そんな主人の心の中を見透かしたのか、セルジュが彼に向かって話題を投げかけた。



「あぁ、そうだな。
けっこう来るよ。
それこそ、あんたらと同じくロマーナの方からの者達がな。」

「そうなのか。
この町には珍しいものでもあるのか?」

「珍しいものなんかありゃしないが…
あ…珍しい婆さんならいるけどな。」

「珍しい婆さん?
なんだ、そりゃあ?」

「いや、なんでもないよ。」

「そんなこと言われちゃ、余計に気になるじゃないか。
おしえてくれよ。」

「…あんたも物好きだな。
一言で言うと、ちょっとイカれた気の毒な婆さんなんだ。
自分のことを魔法使いだか、魔女だとかって信じこんでる。
ところが、そんな婆さんの事を信じて、いろんなことを頼みに来る奴もいるんだから、世の中、わからないもんだよなぁ…」

「女子供は、そういうものが好きだからな。
ま、仕方ないさ。」

「ところで、最近、この町で見慣れない女の子をみかけたことはなかったか?」

「どんな子だい?」

「そうだな。
年の頃は20前後…
身長はごく普通だ。
体型はやや痩せ気味で…髪の毛は肩くらいの長さの栗色で、瞳もブラウンだ。」

「それだけじゃあ、わからないな。
なにかもっとこう…わかりやすい特徴みたいなものはないのかい?」

「えっと…胸の所にピンクの小さな花の刺繍が入った白いブラウスに黒いスカートをはいて…
レヴ…後、なにか、特徴ってあったっけ?」

セルジュがルシアのことを言っていることはすぐにわかった。