私達は、晴れない気持ちを心の奥底に押し隠しながら、先を急いだ。
ルシアがどっちに向かったのかはわからない。
だが、万一、戻っていたとすれば…そう、たとえば、グレンの所ならそういうことだってありうる。
それなら、特に心配はない。
心配なのはやはり、先へ進んだ方なのだ。
だからこそ、私達は先の町へ急いだ。

途中にあった民家でルシアのことを尋ねてみると、思いがけず彼女の情報を耳にする事が出来た。
なんでも三日程前に、ルシアに似た風貌の女性がこのあたりを走って行ったというのだ。



「良かった!
ルシアは生きてたんだな。
三日前にここを通ったってことは、きっとこの先の町で会えるな!」

私達はその話を聞いて胸のつかえがとれたような気がした。



それからの私達は寝る間も惜しんで先を急いだ。
その甲斐あって、二日後にはやっと目指していた町に着くことが出来た。



「ここだ!遠かったがやっと着いたな!」

辿り着いたことに感じた嬉しさも一瞬で消え失せた。
なぜなら、その町は、私達が今までに通って来た町と同じく人気はなく、物音一つ聞こえない死んだ町だったからだ。



「この様子じゃ、ルシアはここには来てないんじゃないか…?」

「そうとは限らないぜ。
町のどこかで俺達が来るのを待ってるか…そうだ、停まった時計がみつからないでいるのかもしれないじゃないか。」

セルジュは、この町にすでにルシアが来ていると考えていたのだ。
それは、私も同じだった。
だからこそ、この町はすでに活気に溢れた本来の姿に戻っていると考えていたのだ。



「とにかく、時計を探そう。」

私達が町に入ると、またいつものようにどこからか鈴の音が聞こえて来た。



「こっちだ…」

停まった時計はすぐにみつかった。
喫茶店らしき店の中央に、その時計はあった。




「すぐにみつかったな…」

「ルシアには、もしかしたら鈴の音が聞こえないのかもしれない…」

セルジュはどうしてもルシアがここに来たと思いたいようだ。
私は彼の言葉には答えず、古時計の蓋を開けると時刻を合わせ、力を込めてその螺子を巻いた。