その日はなんとかなだめたものの、次の日もルシアはほとんど何も食べようとはせず、話しかけても返事すらしなかった。



「困ったな、レヴ、ルシアは相当まいってるみたいだぜ。」

「無理もないことだが…
今は、ルシアのしたいようにさせておくしかないだろう。」

「そうだよな…
それにしても、この雨…
一体、いつまで続くんだろうな。
もしかしたら、この世界は今梅雨時なのか?」

「どうだろうな…
なんせ、ここへ来たのは初めてだからな。」

「……つまらない冗談だな……」



次の日もそしてまた次の日も、まるでルシアの心のような物悲しい雨がしとしとと降り続いていた。



「ルシア、少しでも良いから食べないと身体に悪いぜ。」

「……ほっといて…
こんな世界で生きてても仕方ないんだから…」

「また、そんなことを…
心配するな!
俺が、必ず、元の世界に戻してやるから!」

「いいかげんなことを言わないで!!」

「本当だ。
ルシア、俺を信じろよ!な!」

「馬鹿なことを言わないで!!
あなたの言う事なんて、信じられるわけがないでしょう!
そんなことを言うのなら、今すぐこの雨をやませて!」

「そ、そんなこと…」

「ほら、ごらんなさい。
そんなことさえ出来ないくせに…
もう私のことなんてほっといてよ!」







「怒らせちまったよ。」

「仕方がないさ。
彼女は、今、気が立っているんだ。
この雨がやめば…そして、次の町にでも着けば、少しは彼女の気持ちも落ち着くだろう。」







次の朝…私が目覚めると、何日も降り続いた雨がやっとあがり、ふと見上げた空には、七色の虹の掛け橋が架かっていた。



「ルシア!」



私は彼女の名を呼んだ。
美しい虹を見れば、少しは気が晴れるのではないかと思ったのだ。

……しかし、彼女の返事はなかった。



「レヴ、どうかしたか?」

「いや、たいしたことではないのだが…あそこに虹が…」

「本当だ…!
俺、虹なんか見たの初めてだよ!
綺麗だな!
そういえば、虹を見ると幸せになるとかなんとか言わないか?」

「そうだと良いな。
これからはきっとルシアも元気になっていってくれるだろう。
朝食を食べたら、早速出発しよう!」