「ルシア…まさか、あんたが探してる時計っていうのは…壊れた…いや、止まった時計じゃないだろうな?!」

「えっ!セルジュさん、どうしてそのことを…!」

ルシアの顔色が変わった。



「レヴ!聞いたか?」

セルジュの言葉に私は深く頷いた。



「ルシアさん、教えて下さい。
あなたは、なぜ、止まった時計を探そうと思ったのです?」

「それは……」

「知り合ったばかりですから難しいかもしれませんが…どうか、私達のことを信用してください!
もしかしたら、あなたの力になれるかもしれません。」

ルシアは少し考えているようだったが、やがてどうにか心が決まったのか、不意に小さな声を発した。



「声が…
『時計を探せ』と言ったのです…」



「レヴ…!」

私は、セルジュに向かって、再び頷いた。



「ルシアさん…あなたは私達と同じ境遇のようだ。」

「……同じ…境遇?」

「…そう…信じられないかもしれませんが…私達も、ここの人間ではありません。
なんといえば良いでしょうか…見えない力によって…とでも言えば良いのでしょうか?
私も彼も、そういうものに導かれ、この世界へ連れて来られたのです。」

「ま…まさか…」

「あなたは、もしや、森に入った後、ここへ来てしまったのではありませんか?」

「ええ、その通りです!
知り合いの家に遊びに行った時、裏山の方に森をみつけました。
そしてそこを散歩していたら、まるで見覚えのない場所へ出て来ていて…
そんなに離れていないはずなのに、知り合いの家が見当たらないのです。
数日かけてどうにかあの町へ辿り着きました。
おなかが減って疲れてうとうとしていた時、どこからか声が聞こえたんです。
『止まった時計を探して、それを動かせ』と。
私は言われた通りにしました。
すると、町には急に人々が現れたのです。」

「やはり、そうでしたか…」

「レヴ…奴はどうしてもこのゲームを続けたいようだな。
俺達が動かない事を決めたから、別の駒を差し向けたんだ。」

「…どういうことなんですか?」

「…いや…なんでもない。」

きっと、セルジュの言った通りだろう…
私達に、動かないという選択肢はなかったのだ。
私達が動かないのなら、新たな駒が送られてくるだけなのだ。



つまり、私達は、何者かの意思に抗うことは出来ず…いやでも動かなくてはならないということなのだ…