セルジュの思い付きに従い、私達は何もしないままに今来た道を後戻った。



「どこに行ってたんだい?
遅かったじゃないか。」

家に戻ると、グレンが夕食の準備をして待っていてくれた。



「ちょっと、セルジュとこのあたりを散策に行ってたんだ。」

「そうだったのか。
それで、どこまで行ってたんだい?」

「エミルの町のもう1つ先の町まで。」

「あぁ、あそこには面白いものは何もなかっただろう。
でも、たまにあの広場に歌を歌いに来る奴や、芸をしに来る奴がいるよ。
とはいっても、そんなたいした奴は来ないけどな。」



私はグレンのその言葉に驚愕した。
私とセルジュにとってはまるで死んだように見えるあの町が、グレンにはごく普通の町に見えているということがわかったのだから。


「グレン、あの町に最後に行ったのはいつなんだ?」

「そうだなぁ…
1ヶ月くらい前かな?
それがどうかしたかい?」

「いや…なんでもないんだ。」

セルジュは、私の顔を見て小さく頷いた。
おそらく彼も私と同じことを考えていたのだろう。



それからの数日間、私達は、あえてあの町へは行かず、そのほとんどをグレンの家の中で過ごした。



「なぁ、レヴ、グレンの話だと、俺達以外にはあの町は何事もないように見えてるみたいだな。」

「そうだな。
時が止まったように感じられるのは、おそらく私と君だけだ。
他の者達にとっては、ごく当たり前の町に感じられてるんだろう。」

「どっちが本当なんだ?」

「きっと…どちらもが本当なんだ…」

「どういう意味なんだ?」

「私にもよくわからない。
ただ、私達は本来のここの住人ではない。
だが、グレンはここの人間だ。
だから…」

「だから、どうなんだ?
もっとわかりやすく説明してくれよ!」

「残念だが、私自身にもよくわかってはいないのだ。
ただ、漠然とイメージのように感じることがあるだけで…何がどうなっているのかは、君同様わからない。」

「困ったもんだな…
やっぱり、俺達が動かなけりゃ何も始まらないってことなのか…」

「残念だがそうなのかもしれないな…」



だが、そうではなかった…