「へぇ…あんた、こんなでかい家に一人で住んでるのかい?」

「あぁ…まぁな。」



セルジュが驚くのも無理はない。
一人暮らしだと聞いていたから、てっきり、アパート暮らしだと思いこんでいたのだが、グレンの家は一人で住むには広すぎる立派な屋敷だった。

私達は今後の予定も決まらないまま、グレンの家に滞在することになった。



「レヴ、グレンのおかげでしばらくの暮らしはなんとかなるにしても…これからどうするつもりなんだ?」

「そうだな…とりあえず、隣の町まで行けることはわかっているが…その先がどうなっているのか、明日にでももう一度隣町に行ってみよう。」

「そして、またあの壊れた時計を探すってわけだな。」

「そういうことになるな。
おそらく、それがみつからないことには先へは進めないのではないかと思う…」

「どうやらそうらしいな。
今は、なんでそんなことになったのか?なんてことを考えてもきっと答えはみつからないだろうから、先に進む道を探すしかない…
そういうことなんだろ?」

「あぁ、その通りだ。」







私達は、次の日、またエミル達の住む隣町を訪れた。


さほど広くはない町を通り抜け、街道をしばらく進むと、次の町に着いた。



「やはりな…」



予想通りだった。

その町には誰もいない。



ここもまたあの石畳の町と同様に、町はしんと静まり、物音一つしない…




「ここでまた時計探しをしなくちゃならないってことか…」

「そのようだな。」

「時計がみつからなければ、先へは進ませてやらないよ!…って、誰かが意地悪をしてるわけだな。」

「そうらしいな。」

「ずいぶんと馬鹿馬鹿しいゲームを考えた奴がいるもんだ。
……でも、あんたは最後までそのゲームをやる気なんだろ?」

「君はやらないつもりなのか?
他になにか策でもあるというのか?」

「いや…策なんてなにもない。
ただ…こんな風に良いように動かされるのが、ちょっと癪に障ってな…
結局は、あんたの言う通り、このゲームを終わらせない限りは、元の世界には帰れないのかもしれないが…本当に帰れると思うか?」

「それはわからないさ…
だが、今は私には選択肢がないように思える。
元の世界に帰れようが帰れまいが、今は私にやれることをやるしかないように思えるのだ…」