その後、私達はカルヴェス一家と共にとても和やかな時を過ごした。

私はエミルにピアノを教え、皆で私の伴奏に合わせて歌を歌い、カルヴェス夫人の心のこもった夕食やデザートをいただきながら、他愛無い話を交わしては笑った。



「皆さんのおかげで今日はひさしぶりに楽しい時を過ごす事が出来ました。
本当にありがとうございます。」

「レヴさん、セルジュさん、ぜひまた遊びに来て下さいね!」

「こちらこそ、どうもありがとうございました。」

「レヴさん!セルジュさん、絶対だよ!絶対にまた来てよ!」

「あぁ、エミルも遊びに来いよ!
しばらくは隣町にいると思うから。」

「うんっ!」



エミルは、つい先日まで部屋に引きこもっていたとはとても信じられないような輝くばかりの明るい笑顔を見せてくれた。

私達が屋敷を出てからもいつまでも手を振るエミル…
そして、それに同じように飛びあがってはエミルに向かい大きく手を振るセルジュ…



曲がり角を曲がり、ようやくお互いの姿が見えなくなった。



「……レヴ、今日は本当に良い日だったな…」

「あぁ…そうだな…」

「俺…ついて行って良かったよ。」

「君とエミルはとても気が合うようだな。」

「そうなんだよ。
なんか…弟みたいな感じだな。
しかも、不思議なことがあったんだ!
俺、ここにほくろがあるだろ?
エミルも同じ場所にほくろがあるんだよ。
びっくりだな!」

そう言って、セルジュは手首のほくろを見せてくれた。



「へぇ…偶然とは言えすごいもんだな。
なぁ、ところで、これからどうするんだ?
金も全部取られたって言ってたよな?」

「あぁ…そうなんだ…」

「じゃ、うちに来るかい…?
幸い、僕は一人暮らしなんだ。
好きなだけいてくれて良いよ。」

「本当か?
そいつは助かるぜ!」



私達は、困っていたこともあり、グレンの有難い申し出を素直に受けることにした。