「レヴさん、どうもありがとう…」



赤い目をしたエミルが私にそう言って、にっこりと微笑んだ。
無理して作った笑顔ではあったが、彼はじきに自然に笑えるようになるだろう…
そんなことを予感させる笑顔だった。



「レヴさん…本当にありがとうございました。」



今度はカルヴェス夫妻が私の手を取り、そう言ってくれた。



「実は、あなたを初めて見た時、ジェレミーと重なって見えたの…
とても不思議な感覚だったわ。
あなたとは年も全然違うのになぜだかジェレミーの面影を感じるのよ。」

「おまえもそうだったのかい!?
実は、私もそうだったんだよ。
気分を壊されてはいけないと思い、口には出さなかったんだが…
不思議なこともあるもんだな…」

「言われてみればパパやママの言う通りだね。
レヴさんのピアノ…兄さんが弾いてるみたいだったもの…」

それだけ言うと、エミルはこみあげる涙を見られたくなかったのか、そっと俯いてしまった。

エミルになにか言葉をかけようとした時…
彼の顔があがった。



「ねぇ、パパ、ママ!
僕…ピアノを練習してみることにするよ…」

「えっ?でも、あなた、ピアノは…」

「うん…
ピアノは兄さんを殺したんだって思ってたから嫌いだったんだけど…
そうじゃないってわかったから…
きっと、兄さんみたいにうまくはなれないと思うけど…
でも、練習してみたい。
ピアノを弾いたらいつでも兄さんを思い出せるから。
ずっと忘れないでいられるからね。」



「エミル……!」