「こんな所に……?」



セルジュの漏らした呟きに、私も心の中で共感を覚えていた。
グレンに連れられ、私とセルジュは隣町まで行くことになったのだが、あれほど探してもみつからなかった町の「出口」がすぐ傍にあったことに私達は驚いていたのだ。
町を出ると、そこからはなだらかな道が続き、遠くの方にうっすらと隣町の輪郭が見えている。

つまり、これは隣町へ行っても良いということ…
いや、おそらくは、隣町へ行く必要があるということなのだろうと、私は思った。



「どうしたんだ?二人とも、深刻な顔をして…」

「いや…たいしたことじゃない。」

「もしかしたら、君達は、隣町へ行くのは初めてなのかい?」

「あぁ、そうだ。」

「そういえば、君達はどこから来たんだい?
町では今まで見かけたことはなかったように思うんだけど、最近、越して来たのかい?」

「いや…私達は…旅をしているんだ。」

「そうだったのか!?
それにしては、えらく身軽だな。
荷物はないのかい?」

「荷物は…」

「……じ、実は、荷物は、ここへ来る途中ですっかり盗まれてしまったんだ。」

「それは大変だったな!
金もすっかりいかれたのか?」

「そ、そうなのだ…それで、私達もほとほと困ってた所なのだ。」

セルジュの口から突然飛び出した嘘に私も便乗しておいた。
こう言っておいた方が後々都合が良いかもしれないと思ったからだ。
どうせ、本当のことを話しても信じてはもらえないだろうから…



「僕に出来る事があれば、なんでも言ってくれよ。」

「ありがとう、そう言ってもらえると助かるよ。」

グレンのその言葉は単なる社交辞令ではないだろうと思えた。
今までの印象で、彼が率直な男だということがよくわかるからだ。

隣町まではすぐだった。
石畳の町とはうって変わり、人影もまばらでとても静かな町だった。



「ここはえらく静かなんだな。」

「そう言われればそうだな。
ここは元々は石畳の町から出た人達が作った町らしいんだ。」

「なんでこんな近くに?」

「さぁ、そこまではわからないな。
なんせずいぶん昔のことだからな。」

町の広さはまだよくはわからないが、家の数が少ないのは確かだ。
木がやたらと多く、まるで森の中に町を作ったような印象だ。



「あの家だ!」

しばらく歩いているうちに、グレンが一軒の屋敷を指差した。