私達は公園の片隅のベンチに陣取り、これまでに私の身の上に起こった出来事をセルジュに話して聞かせた。



「じゃあ、何か。
町にある古い止まった時計を動かすと、町に人々が戻るってことか?」

「今まではそうだ。」

「今までは…って、じゃあこのおかしな現象は、これからも続くっていうのか?」

「そんなことは私にはわからない。
私はむしろ、なぜ、こんなことが起きているのかという事の方が知りたいのだがな…」

「そんなこと、誰が教えてくれるっていうんだよ。」

「その通りだな。
きっと、誰も教えてはくれない。」

「そんな呑気なこと言ってて良いのか?
俺達、この先、どうなっちまうんだ?」

「皆目わからない。」

「わからないって…これからどうするつもりなんだ?」

「何もわからない以上、流されてみるしかないのではないか?」

「流される?」

「そうだ。
おそらく逆らっても良い結果は出ない。
いや、それはあくまでも私のカンなのだがな。
何者の差し金なのかわからないのはあまり気分の良いものではないが、とにかく、今はそうするしかないように思う。
君という仲間とも出会えたのだから、一人でいた時よりも心強いしな。」

「あんた……見た目と違って意外と楽天家なんだな。
だけど、確かにあんたの言う通りだ。
これから、どんなことが起きるのかはわからないが、よろしく頼むぜ!」

「こちらこそ、よろしく頼む。」

私とセルジュは二度目の握手を交わした。



「さて…と。
じゃ、これからどうする?」

「そうだな…ここに座っていても仕方がないしもう少し町を歩いてみるか…」

私達は、あてどなく町の中を歩き出した。



「しかし、ただ歩くってのも何だな…
この町は出た方が良いのかな?
出口を探してみるか?」

「それも良いな。
状況が変わったのだから、もしかしたら、今度は出口がみつかるかもしれない。」

そんなことを話していると、どこからか軽やかなピアノの調べが耳に届いた。



「……誰が弾いてるのかわからないがうまいもんだな。
レヴ、あんた、音楽は好きかい?」

「あぁ、ピアノは特に好きだ。」

ピアノの音はだんだんと近くになってくる。



「多分、弾いてるのはあの屋敷の者だな。」

セルジュが指差した先には、壁面を蔦で覆われた一軒の屋敷が建っていた。