キモチの欠片


「そう、やっぱり知っておきたいし」

遠藤さんは前のめりで聞いてくる。
もう、ホント面倒だな。

「えっと、パ……父親みたいな人ですかね。優しくて頼りがいがあって、一途な人がいいですね」

こんな感じでいいかな、嘘ではないし。

うちのパパのママ大好きオーラは年老いても変わらない。
あの溺愛っぷりは呆れてしまうほど。
ママもママで、パパのことが大好きなんだよな。

一人の人をいつまでも愛する姿に憧れる。
まぁ、パパは子供にまで嫉妬するのはどうなの?って感じだけど自慢の両親だからね。

「へぇ、お父さんみたいな人がタイプなんだね。どんな人なのか一度会ってみたいな」

チラッと横を向くと柔らかそうな笑みを見せる。
その笑顔からはさっきの言葉は本気かどうかなんて検討もつかないけど。


いきなり、正面の男から足をコツッと軽く蹴られた。

痛い!
何するのよ。


「ゆず、相変わらずファザコンなんだな」

ククッと笑い嫌味が聞こえた。