キモチの欠片


今日は絶対に厄日だ。
遠藤さんが話し掛けてくるばかりするし葵には睨まれるし……居心地が悪いこと、この上なし。

早くお開きになればいいのに。

遥や桐島さんたちはそれなりの楽しく盛り上がっているのを横目で見る。
これはもうしばらく終わりそうにない雰囲気を感じ取り、小さくため息をついた。


「ねぇ、柚音ちゃんてどんな男がタイプ?」

遠藤さんはこの微妙な空気もお構いなしで正直イラッとする。
ジョッキをテーブルに置いた。


「えっと、タイプですか?」

いきなりそんなこと聞かれても困るんだけど。

タイプってなんだろう。
今まで本気で人を好きだと思ったことがないから当然、恋い焦がれるという気持ちも分からない。

香苗先輩の話を聞いたりして、恋愛っていいなと思う程度。

この年で恥ずかしながら、あたしの恋愛数値は“ゼロ”に等しい。
彼氏とデートだからお洒落して、とかそんなことをした経験がない。

今考えたら、もったいない青春時代だったよな……。