キモチの欠片


原田さんがいなくなり顔を上げると葵と目が合った。
葵はなにか言いたげな顔をしてたけどその場から早く逃げ出したかった。

「……あたし、戻るから」

葵に背を向け歩き出した。

やだやだ、まだ唇に葵の柔らかな感触が残ってる。
思わず手で自分の唇を触る。

結局、また逃げてしまった。
でも、今のあたしは冷静に考えることが出来ない。

個室に戻り深呼吸して扉を開けたら、席が変わっていた。

あたしの席はポッカリ空いたままだったけど隣には遠藤さんの姿があった。

「柚音、席替えしたから」

遠藤さんが待ってるよ、と遥が耳元で囁く。

その言葉にため息をつき、モヤモヤした気持ちを抱えたまま席に座った。


「お帰り、待ちくたびれちゃった」

遠藤さんがニッコリと微笑む。

「あ、どうもすいません」


別に待っててなんて言ってないし。
悪いけどあたしはそれどころじゃないんだけど、と心の中で悪態をつく。