キモチの欠片


ガタッ、と背後で音がし身体が震えた。

葵にも音が聞こえたみたいでハッとしたように顔をあげる。

その隙に葵の胸を押して距離をとった。

誰かいるの?
居酒屋の店員さんかな。

いや、他のお客さん?
まさか……考えたくないけど、合コンに参加してるうちの会社の人とか?

それだけは絶対に嫌だ。
いいようのない緊張感に襲われた。

覚悟を決めゴクリと唾をのみ、ゆっくり振り返ると、そこにいたのは原田さんだった。

「あ、ごめん。見るつもりはなかったんだけど……」

気まずそう顔をしてあたしと葵をチラチラと交互に見る。

あのキスを原田さんに見られてたと思うだけで恥ずかしくて堪らない。
あたしは視線を落とし俯く。

「今、見たことは忘れるし誰にも言わないから。本当にごめん」

原田さんは謝罪の言葉を残し、レストルームに消えていった。