キモチの欠片


あたしは部屋の一番奥で葵は入口側。
対角線上にいる葵とあたしの視線がバチッと絡み合った。


はぁ?

葵が今、あたしのこと『バカ』って口パクして睨んできた。
ムカつくんですけど。

あんたにバカって言われる筋合いはないっつうの。
眉間にシワが寄りそうになるのを必死に堪える。


食べ物や飲み物を注文したのがテーブルに並べられ、乾杯を済ませた。


「じゃあ自己紹介でもする?」

桜井さんが切り出した。

自己紹介って名前を言うぐらいしか思い付かないし何を言えばいいのかよく分からない。
だから合コンは苦手なんだよなぁ。

広報部のお姉様たちはそれはもう素晴らしいアピールしまくりの自己紹介を披露する。

ついでに遥も猫かぶりで笑ってしまう。
それを横目で見ながらビールに口をつける。

あたしってどう考えても場違いだよね。

しかも、服も他の4人と違ってデニムってどうよ、みたいな。
さっさと帰りたいと言うのが本音だ。