キモチの欠片


「羽山くん相変わらずカッコイイね」


同じ受付の二歳年上の山村香苗先輩がこそっと耳打ちしてくる。

香苗先輩は男が守ってあげたくなるオーラを放っている。
同姓から見ても可愛らしく、おまけに性格もいい。
これでモテない訳がない。

実際、いろんな人たちから声をかけられているのを何回も見た。
いつも相手に対して不快な印象を与えないように断っていた。
これには流石の一言だ。


「彼って新入社員なのになんか貫禄あるし、あれで年下なんてビックリだわ」

「アハハ……そうですか、ね」


確かに葵はいつも背筋を伸ばし堂々とした立ち居振る舞いをしている。
背も高いから迫力はあるかも知れない。



「彼氏がいなければ私も声をかけていたかも。あ、でも羽山くんていつも柚音だけに声をかけるのはなんでだろうね。私のことは一切スルーなんだけど」


香苗先輩は不満そうに口を尖らす。


「それはあたしが幼なじみだからだと思いますけど」


もっともらしいことを適当に答えると「そうか、なるほど」と納得した顔の香苗先輩。