キモチの欠片



葵のことが全く分からない。

気まぐれで避けたりまた話しかけたり、ホントに困るんだ。
あたしの気持ちをかき乱さないで欲しい。


無視され続けた、あの時の惨めな気持ちを忘れた訳じゃない。

高校時代、

『いい加減、あそこまでシカトされ続けてよく話しかけてくるよな』
『嫌われてんの、自覚ないのか?』

葵の周りの人たちからの心無い言葉と憐みの視線……思い出しただけでキリキリと胸が痛む。



出来れば葵とは二度と会いたくなかった。
でも会ってしまったのは変えられない事実。


あたしのことは放っておいてくれたらよかったのに。
入社以来、なにかと絡んできて迷惑極まりない。


癪だからあたしは他人のフリ、って……まぁ実際問題、他人なんだけど。
葵が話しかけてきてもあたしは必要最低限の事しか話さない。


昔みたいに喋ってやるもんかと頑なに敬語を駆使して会話をしている。

これはこれで疲れるのでやめたいけど、あたしの性格上そういう訳にもいかない。
本当に厄介な話だ。