キモチの欠片


「あれ?柚音じゃん」

ふいに前方から名前を呼ばれたので視線を前に向けると、雑踏の中から「よぅ」と右手を上げ近付いてくる男を見た瞬間、驚いて息をのむ。

あたしが県外に住んでいる時、コンビニのバイトで一緒に働いてたヤスだ。

白のTシャツにデニムのハーフパンツ、胸元にはネックレスが光っている。

何でこんなところで会うんだろう。
自分の運の悪さに愕然とする。

ヤスは目の前で立ち止まると、隣の葵に視線を移し上から下へと値踏みするように眺め、またあたしを見る。

「なぁ、最近連絡しても全然繋がんなくて寂しかったんだぜ」

馴れ馴れしくあたしの肩に腕を回してきた。

「ちょっと離してよ。もう連絡しないし会わないって言ったでしょ」

肩に回された腕を払おうと必死にもがいたけどヤスは更に腕に力を込める。

「つれないこと言うなよ。また遊ぼうぜ」

そう言ってフッと耳に息を吹きかけてきた。

「ちょっとやめてよ」

息を吹きかけられ身体がゾワゾワと寒気がして気持ち悪い。