「やっぱり朔ちゃんには効かなかったか」
「当然だろ。で?」
で、と言われ首を傾げ、意味も分からず朔ちゃんを見る。
「柚音、なんかあってここに来たんじゃないのか。それじゃなきゃ、来て早々こんな気持ち悪いぐらいおとなしい訳ないだろ。愚痴でもなんでも聞いてやる。今なら出血大サービスだ」
カウンター越しに優しい目を向けてきた。
朔ちゃんはなんだかんだ言いながらあたしに甘い。でも、それを分かっていてここに来たっていうのもあるんだよね。
あたしは葵に食事に誘われたけど無視して逃げて来た事を伝えた。
そんなことをしてしまうに至った経緯もかいつまんで話すと、朔ちゃんは相槌をうちながら最後まで話を聞いてくれた。
「なるほどな。で、今日そいつから逃げて来たのはいいけど明日からどうするんだ?毎日会社で会うんだろ」
キョトンとして朔ちゃんを見る。
あ……、そうだ。葵とあたしは同じ会社だった。



