キモチの欠片


お店を出て、散歩がてら街頭に照らされた歩道を二人並んで歩く。

夜空には星が浮かび、頬を撫でる風が気持ちいい。
歩きながらさっきの葵の行動に文句を言ってやろうと口を開いた。

「ちょっと、人前で絶対にあんなことしないでよね」

「は?あんなことって何だよ」

「だーかーら、あたしに物を食べさせたりしないでよ」

何でこんなことを言わなくちゃいけないんだ。
当の本人は、何のことだと首を傾げてるし。

「あー、そのことか。別にいいだろ。何でそんなこと気にするんだよ」

「気にするわよ。だって周りに人がいるんだよ。さっきだって隣の老夫婦に見られてたんだから!」

「あんなの減るもんじゃないんだから見られたって平気だろ?」

この男は~!
減るとかそういう問題じゃない。

「平気な訳ないでしょ。人前で二度とやらないでよね」

鼻息荒く言うと、葵はため息を吐く。

「分かった分かった。人前じゃしねぇよ。仕方ねぇ、ゆずのお望み通り二人きりの時にいくらでもしてやるよ」

ニヤリと口角をあげて笑う。
お望み通りって……。

「バッカじゃないの?あたし望んでなんかいないからね」

「はいはい。そう言うことにしといてやるよ」

力強く否定すると、葵は頭のポンポンと撫で、そのまま手を差し出してくる。

ムカつきながらも手を伸ばすと、葵は柔らかく微笑みギュッと握ってきた。