キモチの欠片


着いた場所は、裏路地にひっそりとたたずむ二階建てのイタリアンのお店だった。

店内に入ってすぐに目に飛び込んでくるのは、オープンキッチンのカウンター。
そこにはたくさんの食材が並んでいて、シェフが料理する姿が間近で見れるので、カウンターは人気席らしい。

店内は木の暖かみがあり、アットホームな雰囲気。
一階はテーブル席とカウンターがあり、おひとり様でも気軽に入れるような感じで、二階は宴会などで貸し切りも可能なテーブル席がある。

「よくこのお店、知ってたね」

「あー、開発の先輩に一度連れてきてもらったんだ。美味かったからゆずにも食べさせてやりたくて」

メニューを捲りながら聞くと、葵はサラリとそんなことを言う。
その気持ちが嬉しくて思わずニヤける。

店内の黒板に本日のおススメのメニューが書いてあり、どれを食べようかと手持ちのメニューを交互に見る。
あれも食べたいし、これも食べたいとなかなか決まらないあたしを見かねたのか、葵は店員を呼びさっさと注文してしまった。

注文を確認し終わり、去っていく店員を目で追い唖然とする。

「ちょっと、何で勝手に決めたの?」

「俺は腹が減ってるって言っただろ。ゆずが決めるまでそんなに待ってられないっての」

えぇー、さっきのあたしに食べさせてやりたいっていう気持ちはどこへ行ったの?
あたしの感動を返して欲しい。