突然言われた言葉に面食らう。
「は?そんなこと言った覚えなんてないよ」
全く身に覚えがなくて眉間にシワが寄る。
何年前の話だと思ってんの?
それに、幼稚園ということは葵のことを恋愛という意味で好きとか意識してなかったと思うし。
「言ってましたー。俺は確かにこの耳で聞いたもんね」
葵はそう言って自分の耳たぶを親指と人差し指で挟むように触り、聞いたということをアピールする。
「言ってませんー」
「言いましたー」
あたしが言い返すと葵もそれに応戦する。
言った、言わないの堂々巡り。
あたしらは小学生か?と突っ込みたくなるような馬鹿馬鹿しいやり取り。
それでも葵とこういう感じで話せるのが楽しくて仕方ない。
「それに、この前の梨音さんからの留守電聞いたけど、ゆずだって初恋は俺なんだろ?だったら素直に認めろよ」
葵はとどめとばかりに、ニヤリと笑いながら言った。
あーっ!
そう言えば、お姉ちゃんがお互いのこじらせまくった初恋とか言ってた気がする。
もう、余計なことを言って……。
「そうです、そうです。あたしの初恋は葵ですよー」
「何、その棒読みの気持ちのこもってないセリフ。あー、萎えるわ」
言い返しても疲れるだけだと思い、開き直ると葵は大袈裟にため息をつく。
その姿がおかしくて笑えば、葵もプッと吹き出して笑う。
この空気感が懐かしくて堪らない。



