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晩ご飯を食べに行くため、葵の車に乗せてもらっていた。
「二人して泣いてるから何事かと思ったぞ」
「あたしは別に泣いてないけどね」
「出た出た、ゆずの意地っ張りが。目をウルウルさせて鼻水すすってたくせによく言うよ」
ちょうど信号が赤に変わり、車が止まる。
葵はハンドルから左手を離し、乱暴にあたしの髪の毛をグシャグシャにしてきた。
「ちょっと止めてよ」
その手を払い、手櫛で髪の毛を直す。
それを見ていた葵はクスクス笑っていたけど、不意に真面目な顔つきになり口を開く。
「親父、何を言ってたんだ?」
葵はお父さんが何を言ったのか気になるみたいだ。
そりゃ、お互いに泣きそうな感じで話をしていたら嫌でも気になるよね。
「葵の幼稚園の頃の夢の話」
その言葉に葵は思い当たる事があるみたいでバツが悪そうに呟く。
「親父のヤツ、まだ覚えてたのか……」
「そりゃ覚えてるでしょ。息子の夢だもん。社長、葵が会社を継いでくれるのが本当に嬉しかったんだね。ところで、葵って幼稚園の頃からあたしのことが好きだったの?」
「悪いかよ。だから前に言っただろ!長年の想いって」
あたしがニヤニヤと笑いながら言うと、不貞腐れた表情になり答える。
だけど、反撃とばかりにフンと鼻を鳴らした。
「お前だって幼稚園の頃に『あたしはあおいとけっこんする』って言ってたんだからな」



