キモチの欠片


「そういえば今日は笠井さんはいないの?」


少し顔を上げ問い掛ける。


「今日は孫の誕生日だから休み。あの人は孫が大好きだからな。デカいぬいぐるみをプレゼントするって意気込んでいたよ。最近、腰が痛いって言ってて、あまり無理して倒れられても困るからゆっくりしてもらってるんだ」


そう言って手を洗い、キュッと蛇口を閉めた。

笠井さんというのはこのバーのオーナー。
孫がいるおじいちゃんだけど、すごくお洒落なオジサマって感じの人だ。

朔ちゃんは学生時代からここのバイトをしていた。
笠井さんから、将来的に朔ちゃんにバーを譲るからずっと働いて欲しいと懇願され今も働いているらしい。


朔ちゃんはグラスの中に氷を入れ液体を注ぐ。そしてオレンジ色の液体の入ったグラスをコースターの上に置いた。


「どうぞ」

「ありがと」


身体を起こしグラスを手に取り一口、ゴクリと飲む。


「えっ、これオレンジジュースじゃん」


期待してたアルコールではなくソフトドリンクだった事に抗議の目を向ける。