キモチの欠片


カラン……、
ドアを開けるとドアベルが鳴る。

店内は適度に空調が保たれていて、薄暗く落ち着いた雰囲気でジャズが流れている。


「こんばんは~」


席はカウンターの十席のみ。
カウンターの奥の棚にはいろんな種類のお酒のボトルが綺麗に並んでいる。

こじんまりとしていてガヤガヤ騒ぐ感じの居酒屋と違い、しっとりというか静かに過ごせる出この空間はあたしのお気に入りの場所なんだ。


あたしの声に、店の奥から人が出てきた。


「すみません、まだ準備中な……って柚音か。こんな時間からどうしたんだよ」


低いよく通る声。
あたしを見た途端眉間にシワを寄せる。


「うん、ちょっとね……。朔ちゃん喉が渇いたからなんか飲ませてよ」


椅子に腰掛けカウンターに突っ伏した。

そんなあたしの姿を見て、ふぅ、と呆れたようにため息を吐いた男。


朔ちゃんとはこの店のバーテンダー。
長身で黒髪短髪の顎ヒゲ、パッと見は怖そうな雰囲気を醸し出している。
だけど、このバーでシェイカーを振る姿は見惚れるほどだ。