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一日の仕事が終わり更衣室で帰り支度をしていた。
「あー、今日も一日よく頑張った。さて、晃くんにメールしてみようっと」
あたしの隣で香苗先輩は着替えを済ませ、弾んだ声を出しながら背伸びをする。
そしてバッグから携帯を取り出しメールを打ち始めた。
いつも彼氏に終わったよコールをしている。
それを横目にバッグを掴んだ。
「香苗先輩、お先に失礼します」
急いで更衣室を出るとキョロキョロと注意深くエントランスを見渡した。
よし、いない。
葵がいないのを確認すると足早にエントランスを抜け会社を出た。
クーラーの効いた社内から一歩出ると夕方とはいえ、少し歩くだけで汗ばんでくる。
ホッと息を吐き、その足である場所に向かう。
大通りから一本裏道に入るといくつもの雑居ビルが立ち並んでいる。
その間にひっそりと佇む、隠れ家的存在の店。
シンプルな木製のドアには
Bar、ダークムーン
と書かれている。
まだcloseの看板が掛かっているけど遠慮なくドアを開けた。



