キモチの欠片


葵は不意にあっ、と声を出す。

「なぁ、ゆず。聞くんだけど昨日はなんで俺のキスを受け入れたんだ?」


掴んでいた手を引き寄せ顔を近付けてきた。


「……っ!」

顔が赤くなるのが自分でも分かる。
それを見られたくなくてフイとそっぽを向いた。

「なぁ、どうして?」

「そ、そんなの聞かなくてもいいじゃない」


アタフタして返答に困ってしまう。


「聞かなくてもって聞かなきゃわかんねぇだろ。てか、なんでそんな真っ赤な顔してんのかなぁ?俺はゆずのこと好きなんだけど、ゆずは俺のことどう思ってんの?」


頬を人差し指でつつきながらクスクス笑う。

そんなの恥ずかしくて言える訳ないじゃない。
隙を見てダッと走り出した。

「逃がす訳ねぇだろ」

あっという間に葵に腕を掴まれ、後ろから抱きしめられた。