キモチの欠片


「ありがとう」

遠藤さんはホッとした表情を見せる。
だったら最初からするなよ、と思ったのはここだけの話。

「遠藤さん誓約書の件はまた後日。ゆず、そろそろ帰るか」

「それじゃあ、失礼します」

葵が席を立った。
それに続くように一礼して後を追った。

ファミレスを出るとぐっと背伸びをし首をコキッと鳴らし、清々しい気持ちで空を見上げた。
気を張っていたからどっと疲れが出た。

結局、遠藤さんは何がしたかったんだろう。
それをちゃんと聞けばよかった。

だって、変な手紙を送りつけただけだよね?
他に害はないし……。

まぁ、済んだことだから深く考えなくてもいいか。

それより、葵にお礼を言わなくちゃ。


「今日はホントにありがとね」

葵がいてくれなきゃこんなに早く解決なんて出来なかったし。
親身になって考えてくれたお陰だ。

「あぁ、んなこと気にすんなよ。でも何事もなくてよかったな」

頭をクシャリと撫でて笑う。

そんな顔で笑わないでよ。
なぜか、ドキドキしてしまう。