キモチの欠片


「分かった、約束する」

遠藤さんは神妙な顔つきで言う。
その言葉にひとまずホッと一息つく。
だけど、そこへ今まで黙ってコーヒーを飲んでいたヤスが口を挟んできた。


「あのさぁ、口だけの約束だけじゃ心許ないし誓約書でも書いてもらえばいいんじゃない?俺も、こんな胸くそ悪ぃことに二度と巻き込まれたくないっすから」


えらい強気なヤス。調子のいい男だ。

遠藤さんはゆっくり目を閉じてふぅと息を吐き出した。


「分かった、誓約書も書く。ただ、すぐに柚音ちゃんを諦めることは難しいから密かに想うことは許して欲しい。けど、吹っ切れるように努力する。迷惑をかけて本当に申し訳なかった」


テーブルに額をつけるまで頭を下げる。

葵は不満そうな顔をしていたけど、あたしは安堵の息をはいた。

「遠藤さん顔を上げてください。その言葉、絶対に忘れないでくださいね。今回は報告しないでおきますけど、二度目はありませんから」

念を押すように言い、じっと遠藤さんと視線を合わせた。