「遠藤さん今回の件は一応、会社に全て報告させてもらいますけどいいですね」
今まで黙って話を聞いていた葵が静かに口を開いた。
「えっ、いや、それだけはやめてくれないか」
遠藤さんは狼狽えながら葵を見る。
「何を言ってるんですか。もし、ゆずがこの手紙を警察に持って行き、ストーカー被害に遭っていると届け出を提出していたらどうなっていたと思いますか?」
遠藤さんは見る見るうちに真っ青な顔になっていく。
きっと、そこまで深く考えてなかったんだろうということがうかがえる。
「遠藤さんはゆずに対して迷惑行為をしたんです。そこにいる男とか、あなたの勝手な考えでいろんな人を巻き込んでいるんです。それにうちの会社の就業規則に目を通してますか?『社員として相応しくない行為があれば懲戒の対象になる』と書かれてありますよ。遠藤さん、社会人として自分のとった行為の責任を取るべきでは?」
葵は淡々と話す。
就業規則って……。
そんなの見たことあったかな?
情けないことにあたしは葵が喋るのをただポカンと他人事のように眺めていた。



