キモチの欠片


「えっ、柚音ちゃん?なんでここに……」

明らかに動揺した様子であたしを見上げる。
そりゃあいきなり現れたら驚くよね。


「さっきまでそこにいるヤスと一緒にいて、いろいろ話を聞きましたから」


口調は我慢して柔らかくしているけど、キッチリ睨みはきかせる。
ダン、とテーブルを叩くと遠藤さんはビクッと身体を震わせた。


周囲のお客さんもその音に何事かとこちらに視線が集まり声を抑える。


「あたし、遠藤さんはもっと誠実な人だと思ってましたけど、」

その言葉に遠藤さんは目を泳がせ始めた。

様子を窺っていた葵が遠藤さんの隣に座り、強引に奥に詰めさせて逃げ場をなくす。
葵の登場に目を見開いた。

「どうして羽山まで……」

あたしはそれを見てヤスを奥に押しやって隣に座る。


「あの手紙は一体どういうつもりですか」


感情的になってはいけない。
まずは冷静にならなきゃ、と落ち着いて話す。


「いや、それは……」

「まさか遠藤さんがあんなことをするとは思わなくて、正直ガッカリです」


少し目を伏せ悲しそうな表情を浮かべてみる。
もちろん演技だけど。