キモチの欠片


葵に解放されたヤスは自分の汚れた服をパンパンと払うと頭を九十度に曲げ謝る。

「あんなことして悪かった。もうやらねぇし、遠藤さんと連絡も取らねぇ」


きっと、ヤスと遠藤さんは先輩後輩で仲がよかったんだろう。
でも、このことをきっかけに連絡を取らなくなるのもなんだかなぁと思う。

まさか遠藤さんがヤスを使って封筒を郵便受けに入れていたなんて……。
自分の手は汚さず、人に命令するなんて本当に卑怯な男だ。

「ゆず、こいつはもういいのか?」

葵が顎をしゃくる。

「うん。だってヤスは遠藤さんに言われて嫌々手紙を入れてた訳だし。それに、こんなに謝ってるんだからヤスは許してあげるわ」


“ヤスは”という言葉を強調した。

ヤスは許せても遠藤さんは許せない。
どうにかして話をしないといけないなと思った。
じゃないと、今後なにをしてくるか分からない。

「あのさぁ、さっきから気になってたんだけどアイツの実家ってなんかあんのか?」

葵が不思議そうに聞いてくる。

「それは、ヤスのお父さんが柔道の師範で、」

「おい、いらないことを喋るなよ」

ヤスが焦ったようにあたしの言葉を遮る。
きっと投げ飛ばさてたとか言われたくなかったんだろう、と勝手に推測した。