キモチの欠片


「マジでもうやらねぇから許してくれよ。俺だってこんな気持ち悪ぃことしたくなかったんだよ。遠藤さんとも関わらないようにするから……頼むよ、柚音」

ヤスは懇願するような目であたしを見る。
葵に視線を向けると、お前の好きにしろと言ってくれてるような気がした。

元々、ヤスも遠藤さんに言われて仕方なくやったこと。
そこにヤスの意思はない。


「分かった。ホントにもうこんなことしないでよね。やったらアンタの実家に乗り込んで行ってやるから」

あたしの言葉にヤスはビクッと身体を震わせた。


「マジでやらねぇよ。約束するから実家だけは勘弁してくれ」


真っ青な顔のヤス。

多分こんなことは二度としないと思う。
遠藤さんより自分の親の方が怖いはずだから。

ヤスの父親は柔道の師範で、子供の頃から厳しく指導されていたらしい。
よく道場で投げ飛ばされていたことがトラウマで、未だに親はヤスにとって絶対的存在だと言っていたのを聞いたことがある。
そのことを覚えていてよかった。


「約束だよ、破ったらどうなっても知らないよ。分かった?」

ヤスは首が取れるんじゃないかって思うぐらい頷いていた。