その人物はグレーのパーカーを着てフードを被っているからこちらからは顔が見えない。
でも、背格好からして男というのは間違いない。
コイツが犯人だと確信した。
フードの男は、葵の声に振り返った瞬間、声を漏らし逃げ出した。
「やべっ、」
「待てっ」
葵が追いかけ、あっという間に男を捕まえた。
グッ、と犯人の腕を捻り動けないように馬乗りになり地面にうつ伏せで押さえ付ける。
そして、フードを引っ張ると男の頭が見えると、葵は眉間にシワを寄せ舌打ちした。
「これはなんだよっ。お前はここでなにやってたんだ」
男の手から白い封筒を取りあげ、葵が怒りを孕んだ声を出す。
「ちげぇよ、俺は頼まれただけなんだよ」
そう言って苦しそうに顔を上げて言い訳をする男には見覚えがあった。
コイツとはもう二度と会うことはないと思っていたのに、どうして?
ゆっくりとその男に近付き、口を開いた。
「ねぇ、ヤス。頼まれたって誰によ」
やっとの思いで出した声は自分でもビックリするぐらい低かった。
「んなの言える訳ねぇだろ」
ヤスは視線を泳がせる。
言える訳ねぇって、バカなこと言わないでよ。



