台拭きなどを置いているカウンターに向かい目的の物を手に席に戻る。
台拭きで濡れたテーブルを拭く。
まぁ、スカートは放っておいたら乾くから大丈夫だろう。
その間、葵は無言であたしの動向を見ながら箸を動かしていた。
さて、と気を取り直し箸を手にキャベツを口に入れながら思う。
なんでいつもあたしの前に座るんだろう。
たくさん席は空いてるのに、と周りを見渡す。
こういう事は珍しいことではない。
葵はあたしを見付けると必ず同じテーブルにやって来て有無を言わせず椅子に座る。
これにはイライラを通り越してため息が出る。
高校時代あたしのことを無視してたのはなんだったんだ、と言ってやりたい。
けど、喉まで出かかった言葉を我慢する。
今の葵は、会えば声をかけ優しい笑顔をあたしに向けてくる。
これが高校時代も変わらずしていてくれたらと何度思ったことか。
穏やかだった心がざわつき乱される。だから葵とは会いたくなかったんだ。
急いでご飯を食べ終えて箸をトレイに置き手を合わせた。



