キモチの欠片



トレイを受け取り窓際の席に座った。

ここからは食堂全体が見渡せて後ろを振り向くと外の景色が見えるのでお気に入りの席。

八階からの眺めはすごくいい。


心の中で『いただきます』と言って手を合わせる。


今日は野菜炒め定食。
箸を進めていると食堂の入り口に見知った顔の人が現れた。


マズイと思い顔を伏せたけど時すでに遅し。
そいつとバッチリ目が合ってしまった。

一気に食べるスピードが落ちてしまう。


しばらくして顔を上げるとトレイを手にした葵があたしの前の椅子を引きドカリと座る。


「柚音、今日は野菜炒めか」


葵は豪快にハンバーグを口に運びながら話しかけてきた。

いちいち話しかけてこなくてもいいでしょ。
黙って食べなさいよ!

チッ、と心の中で舌打ちする。


「……はい」


返事をし、氷の入ったコップを手に取り水を飲むとテーブルとスカートにポタポタと水滴が落ちる。

じわりとスカートに染みが広がった。