キモチの欠片


ドアを開けた瞬間にコーヒーのいい香りが漂ってきた。
その匂いにつられるように廊下を歩きリビングに入ると窓から眩しい光が差し込む。

壁時計を見ると九時半過ぎ。
葵の部屋が暗かったのはカーテンが遮光だったからなんだ。

キッチンを覗くとなにやら料理をしている葵の後ろ姿がある。
葵って料理出来るんだ。

男の人が料理できるのっていいよね。
うちのパパも休日にはご飯を作ってくれていたのを思い出す。

カチッと火を止めフライパンを持ち上げフライ返しで器用にハムエッグをお皿にのせ、テーブルに置いた。

「ゆず、適当に座れよ。あっ、その前にちゃんと手と顔を洗えよ。タオルは棚に置いてあるの適当に使って。洗面所はあっちだから」

「あぁ……うん、」

葵はあたしの母親か!
返事をしてみたものの、なんか子供のような扱いにムッとした。


言われた通りに手と顔を洗って再びリビングに戻る。

テーブルにはトースト、ハムエッグにサラダ、カットフルーツが並べられていた。