キモチの欠片



「柚音、先にお昼行きなよ」


香苗先輩が腕時計を見た。

お昼は香苗先輩と交代でご飯を食べることになっている。

早番は十一時半からで休憩時間は一時間。
今週はあたしが早番だ。


「はい、じゃあお先です」

席を立ちエレベーターに乗って八階の社員食堂に向かった。



十一時半、少し時間が早いから社員の人はまばら。
人でごった返すより、少ない方がゆっくりできるからあたしは早番の方がいい。


食券を買いカウンターのおばちゃんに渡す。


「あら、柚ちゃん今日は早番なのね」


大きな声で話す、恰幅のいい六十歳手前の陽気な食堂のおばちゃん。
いつも来てるから顔馴染みになった。

おばちゃんの笑顔を見るだけで元気がもらえる。


「そうなんです。あ、おばちゃん今日はあまりお腹空いてないからご飯少な目で」


「あら~どうしたの?ダイエットかい?しっかり食べなきゃ元気でないわよ」


おばちゃんはケラケラ笑いながらトレイに茶碗を置いた。


「やだなぁ、そんなんじゃないよ。朝、食べ過ぎたからお昼は少しにしようかと思っただけだよ」