病室へ着くと母さんは既に危篤状態だった。

「空兼ちゃん!!いいか?お母さんの手を握って、言葉をかけるんだ!!」

私は言われるままに母さんの手を取り、口を一生懸命動かした。

「母さん!!私だよ!!聞こえる!?空兼だよ!?」

「空兼ちゃん!!もっと!!早く!!」

「母さん!!聞こえるよね!?母さん!!」
私が最後に言った、母さん、の言葉と心電図のピーーーーという音が重なった。
でも私は認めたくなかった。母さんが死んだことなんて。

「母さんってばあ!!返事してよ!!」

「海兼!!」

父さんが来たけど、もう母さんの体は機能していなくて。

父さんはそれを悟ったみたい。

「海兼--!!」

「時間は?」
先生が母さんの目を開いてライトを当てるそして看護師に聞く。

「午後8時30分です。」

私は疲れ果て、汗だくで、壁に寄り掛かった。