県大を5日後に控えたある日。私は成柚と部活が終わってから南月の元へ行った。

トントン・・・

「いらしゃい。よく来てくれたわね。入って。」

顔を出したのは南月ママ。

「「お邪魔しまぁす・・・」」

私達は小声で挨拶して病室に入った。

南月ママは気を利かせてくれたのか、病室を出ていった。

南月は別人みたいに痩せていて、ハリが無かった。いつもの元気な南月では無いことは確かだ。

「何しに来たの・・・?」

え・・・?南月とは思えないくらい低くて怖い声だった。

「何しに来た、って南月のお見舞いに来たに決まってるでしょ?」

成柚は普段のテンションを崩さないように言った。

「私のお見舞いなんかしなくていい。だから帰って。」

さっきよりも怖い南月の声。

「何で?」

また成柚が口を開いた。

「どうせみんな、私が苦しむのを見て楽しんでるんでしょ?」

「何言ってるの?そんなわけ無いでしょ?」

成柚の表情が強張っているのがわかる。

「いや絶対そう。」

「何を根拠に言ってるの?」

今度は私が聞いた。

「根拠なんて無いよ。でもね、今更、私に人の事を信用しろ、なんて、そんなの無理に決まってるでしょ。」

え?どういうこと?

「何があったの?教えて。」

私は動揺がバレないように聞いた。

「何であんたたちに言わなきゃならないのよ!!目も見えなくなって、足も動かなくなった私の人生がどれだけ辛いか分かるの!?」

それを言われたら私は何も言えない。だってもし私が南月の立場だったら、辛くて辛くて耐えられないと思うから。

「いい加減にしてよ!!勝手に自殺したのはあんたでしょ?私達があんたに怒られる筋合いなんて無いよ!!それとも何?南月が自殺したのは私達のせいなの!?」

な、成柚・・・言い過ぎじゃ・・・

「うるさい!!私だって、いっつも幸せそうな顔して生きてる成柚に、そんなこと言われたくないわね!!」

「南月、あんた、それ本気で言って・・・」

私はとっさに成柚を抑えて止め、成柚の荷物と自分の荷物を手に取り、

「ごめんね。もう帰るね。」

涙目でこっちを睨んでいる南月にそう言って、病室を出た。