放課後、、、私が一番好きな時間。
思う存分走れるから。
「空兼~速く~」
「うん。行こー」
ユニフォームに着替えた私たちは足早にグランドへ向かう。


中学生の陸上部は2年の野上紅璃(のがみ あかり)先輩と橋本一泉(はしもと いっせい)先輩と1年A組の永井祈(ながい いのり)くん、1年F組の基咲峻(もとさき しゅん)くん、1年E組の長瀬希くん、それから成柚と私。紅璃先輩は長い髪をツインテールにしていて少し幼さの残る人。橋本先輩は面白くて優しい人。永井くんは背が小さ目で可愛い感じのイケメン。基咲くんは元は優しい人なんだろうけど、無口でクール。背は小さ目で色白でカッコいい。長瀬くんは背が高くて正統派のイケメン。性格も普通に優しい。

「空兼~アップするよ~」
「あっはい。今行きます。」
紅璃先輩はいつも優しくしてもらってる。
準備運動が始まる。さっきまでのワクワク感に加え、緊張感もある。私はこの感覚が好き。

準備運動が終わると、短距離専門の成柚と橋本先輩、永井くんの3人は早速、短距離を走り込む。うちの陸上部は中距離ランナーがいないから、長距離ランナーが大会では中距離を走ることもある。そのため、長距離ランナーの紅璃先輩と基咲くん、長瀬くん、私の4人は最初に800メートルを走ってから長距離の練習に入る。
次の大会は今度の日曜日。だから練習にも力が入る。ちなみに、うちの陸上部は部員数が少ないから男女一緒に練習する。

「空兼、基咲くん、長瀬くん準備できたー?」
あ、紅璃先輩だ。
「できました。」
「オッケーです。」
基咲くんに次いで長瀬くんが返事をする。
「私も大丈夫です。」
私も返事をする。
「じゃあ800メートル走ろうか。」
私たちはスタートラインに並ぶ。
「橋本~ピストルやって~」
紅璃先輩が橋本先輩に頼んでる。
「おう。」
あの2人、妙に中がいいんだよね・・・怪しい・・・まあそんなに興味ないけど。
「位置について・・・よーい・・・」バン!!
私たちが走り出す。そうだ。昨日、紅璃先輩に新しい呼吸法を教えてもらったんだった。
やってみよ。
あ、この呼吸法、結構いいかも。ちょっと嬉しくなる。
いまのところの順位は1位が長瀬くん、2位が紅璃先輩、3位は基咲くん、ビリは私。
今日はせめて3位になりたい。そう思い、ふと前の基咲くんを見た。うわー・・・基咲くんってフォームもクール。っていうか・・・走り方がクリアな感じ。私、普段は男の子とか恋愛とかに興味が全くと言っていいほど無い。成柚は普通に恋とかしっちゃってるけど。
そんな私が男のフォームをまじまじと見たのは初めてだ。なんか恥ずかし・・・




「はあはあ・・・」
疲れた。でも達成感があって気持ちいい。結局ビリだったけど・・・
「空兼~お疲れ様。今日は体が軽そうだったね。」
「はい。先輩から教えてもらった呼吸法、すごく良かったです。ありがとうございます!」
「いえいえ。空兼がこんなに嬉しそうなの初めて見た。」
「そうですか?」
「うん。空兼はいつもクールだからね~」
「野上~ちょっと来て~」
あ、橋本先輩だ。
「今行く~。じゃあ空兼、駐輪場でね。」
「はい。お疲れ様です。」

成柚は先に更衣室に行ってるから、1人で更衣室へ向かう。
ガラガラ・・・
更衣室のドアを開けると、成柚が抱きついてきた。これもいつものこと。
「空兼~~!!待ってたよ~~!!」
「はいはい。早く着替えて帰ろー」
私は苦笑しながら成柚と並んで着替える。