女子100メートルが始まった。

今のところ、県大出場が決まってるのは、成柚以外全員。うちの学校は部員数は少ないけれど、個人個人の力が強いみたい。

成柚も県大に行ってほしい。

次は成柚が走る。

名前と学校名が紹介されて、成柚が手を挙げて礼をする。

「位置に着いて。よーい・・・」バン!!

成柚が走り出した。


頑張れっ頑張れ、成柚!!

100メートルは終わるのが早い。でもその短い時間にたくさんの気持ちが詰まっているよね。

成柚がゴールした。2位だ。予選よりもいいタイムだったんじゃない!?

そのとき、ふと、基咲が目に入った。基咲は穏やかな表情で成柚の方を見ていた。

あれ・・・?今、心がチクッとしたような・・・

その時、成柚が観客席に帰って来た。

「お疲れ様。おめでとう。」

私は成柚に声をかける。

「ありがとう!!」

手で汗をぬぐう成柚は可愛くて。男子にモテる理由が分かる。南月は私の事を、モテる、って言ってたけど、成柚の方がモテてる。成柚は優しくて、元気で明るくて、勉強もできる。全てにおいて私より上。そんな成柚と私を比べて、時々落ち込むことがある。

「成柚!!結果が出たみたいだよ。」

私は暗い気持ちを吹き飛ばすように言った。

「おぉ~!じゃあ、空兼も一緒に見に行こうよ」

「うん。いいよ。」