浩太からの連絡が無いまま十日ほどが過ぎた頃、私は友人と待ち合わせている郊外の喫茶店へひとり車で向かっていた。
本屋の前の赤信号で停まり、それが青に変わるのを待ちながら、歩道を行く様々な人を何の感情もなく眺めていた。
あれから頭の中の隅の方に、いつも浩太がいる。
あんなキスだけで。
あのへたくそなキスだけでアイツを忘れられなくなるなんて、私のねじれた感情がその行き場を探している。
初恋でもあるまいし…
どうかしている。
そんな事を考えながら少しだけ窓を開けて、冷たい風を車に入れた。
そして信号が青に変わろうとした時、歩道に慌てて走り込んで来た人に気づいて私はブレーキを踏み直した。
あっという間に通り過ぎたその人は、渡り終えた所で私の方を横目で確かめ、申し訳なさそうにちょこんと頭を下げると、そこからすぐにいなくなった。
え…浩太…
長い足で駆け抜けてそのまま本屋の中に消えて行った浩太は、振り向きもしなかった。
うそ…
私の方を見たくせに、あの日と同じ私だと気づかなかったわけ?
うそでしょ…
少しぼーっとして、後ろの車にクラクションで急かされ、私は慌てて車を走らせた。
何よ…
バカみたい…
私だけが電話を、あの同じベルの着信音を待っていたなんて。
バカみたいじゃないの。
もう二度と電話なんかしないから。
本屋の前の赤信号で停まり、それが青に変わるのを待ちながら、歩道を行く様々な人を何の感情もなく眺めていた。
あれから頭の中の隅の方に、いつも浩太がいる。
あんなキスだけで。
あのへたくそなキスだけでアイツを忘れられなくなるなんて、私のねじれた感情がその行き場を探している。
初恋でもあるまいし…
どうかしている。
そんな事を考えながら少しだけ窓を開けて、冷たい風を車に入れた。
そして信号が青に変わろうとした時、歩道に慌てて走り込んで来た人に気づいて私はブレーキを踏み直した。
あっという間に通り過ぎたその人は、渡り終えた所で私の方を横目で確かめ、申し訳なさそうにちょこんと頭を下げると、そこからすぐにいなくなった。
え…浩太…
長い足で駆け抜けてそのまま本屋の中に消えて行った浩太は、振り向きもしなかった。
うそ…
私の方を見たくせに、あの日と同じ私だと気づかなかったわけ?
うそでしょ…
少しぼーっとして、後ろの車にクラクションで急かされ、私は慌てて車を走らせた。
何よ…
バカみたい…
私だけが電話を、あの同じベルの着信音を待っていたなんて。
バカみたいじゃないの。
もう二度と電話なんかしないから。


